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手 外 科

Hand Surgery

手首を気にする患者

手外科について

手外科は五感の一つである感覚器の「」を専門的に治療する整形外科分野の一つです。
手には神経、血管、腱、小さな骨で形成される多くの関節、また手のひらには腱膜がはりついた特殊な皮膚、感覚を増すことに寄与する爪と、様々な構造物が絶妙な状態で存在しています。

治療について

手の治療、特に初期治療では専門的知識と繊細な技術が不可欠です。私は、日本手外科学会が認定する手外科専門医・指導医で、この16年間は上肢疾患を専門に治療・研究を行ってきました。また手の治療ではリハビリが非常に重要です。当院でもハンドセラピスト(手のリハビリの専門スタッフ)が、根気よく治療させていただきます。
手の疾患も、疾病・外傷ともに多くは投薬、注射、リハビリなどの保存療法で対応できますが、生活上の支障が強いものや治療に正確性が重要なもの、患者様の生活上の手の使い方により保存治療では症状の増悪や遺残が予想されるものでは手術治療を検討します。

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詳細は当院にご相談ください

このページでは、手の症状と部位ごとに代表的な疾患を述べさせていただきます。疾患の詳細は日本手外科学会のホームページでイラストを用いた分かりやすいパンフレットをご覧いただけます。
手の疾患は、疾病も外傷も様々ですので、ここで紹介しきれません。正確な診断は、よい治療を行うための必須条件ですので是非とも当院にご相談下さい。

疾患

手や手指の痛みや腫れ

手や手指の痛みや腫れの部位を示した手の甲、手や手指の痛みや腫れの部位を示した手のひら
第1関節(DIP関節)の痛みと腫れ
  • 指の変形性関節症が非常に多いです。DIP関節の変形性関節症はヘバーデン結節と呼ばれます。
  • 粘液嚢腫(ミューカスシスト):DIP関節の直上で爪基部にできる病気で、ヘバーデン結節に伴うことがほとんどです。また爪基部に発生するために爪変形を伴うことも多いです。
第2関節(PIP関節)の痛みと腫れ
  • 指の変形性関節症が多く、PIP関節ではブシャール結節と呼ばれます。しかしDIP関節とは異なって関節リウマチによる関節炎も鑑別が必要です。関節リウマチで関節炎が進行するとスワンネック変形ボタンホール変形を呈します。
爪周囲の痛みと腫れ
  • 爪周囲炎は日常診療でよく見ます。爪と皮膚との間から細菌が感染することで起こり、「ひょう疽」とも言います。
  • グロムス腫瘍も爪や爪周囲の痛みではしばしば認める疾患です
指の根本から手のひらの痛み
  • ばね指:この部位での痛みのほとんどはばね指です。指を曲げる屈筋腱の腱鞘炎で、弾発現象がないものも少なくありません。またおや指での発生が最も多く、なか指・薬指にも多いですが、人差し指と小指でも少ないものの認めます。
  • 腱鞘ガングリオンという腫瘍性病変が、ばね指とともに認められることもあります。
おや指の根本の痛み
  • 母指CM関節症によるものが多いです。おや指の手のひらの中にある関節を母指CM関節といい、その部位の変形性関節症です。
手のひらから薬指・小指にかけての紐状
のこぶ
  • デュピュイトラン拘縮と呼ばれる疾患です。手のひらは物をしっかりと把持できるのが特徴ですが、これは皮下に腱膜と呼ぼれる独特の組織が皮膚をしっかりと支持しているおかげです。デュピュイトラン拘縮はこの腱膜がひきつってくる病気です。原因は不明ですが、当初は手のひらの紐状の膨らみだけですが、進行すると主に小指と薬指が曲がって伸びなくなります。

手首の痛みや腫れ

手首の痛みや腫れの部位を示した手の甲、手首の痛みや腫れの部位を示した手のひら
手首のおや指側の痛み
  • ドゥ・ケルバン腱鞘炎が、この部分の痛みの原因で最も多いです。おや指を伸ばす腱(短母指伸筋腱)が、背側第1区画というトンネルで締め付けられると考えられています。おや指の根本に痛みがあることも多く、母指CM関節症との鑑別は重要です。
  • 舟状骨偽関節も同部に痛みを訴えることがある疾患です。舟状骨骨折は外傷直後の診断が困難なことがあり、骨癒合不全の結果、骨折部の異常可動性をきたした状態です。
  • 舟状月状骨離開は手根骨の舟状骨と月状骨をつなぐ靱帯の障害です。レントゲンなどで二つの骨の間が開く以外に、まず手根骨のアライメントを評価します。舟状骨偽関節とともに手関節の変形性関節症の原因となります。
手首の小指側の痛み
  • この部位の痛みは「手関節尺側部痛」と呼ばれ、小さな部位にも関わらず複雑な構造となっており、障害部位も様々あります。
  • TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷は比較的多いです。しかしながらTFCCは複雑な形状であり、損傷部位も様々で診察だけで正確な診断は難しいです。
  • 尺骨突き上げ症候群も代表的な尺側部痛の原因疾患です。これは2本の前腕骨(橈(とう)骨と尺骨)の長さが異なり、尺骨が長いために末梢の手根骨と衝突して生じます。
  • それ以外にも尺側手根伸筋腱腱鞘炎月状三角靱帯障害豆状三角関節障害など様々な疾患を鑑別していきます。
手首の中央の痛み
  • 手関節背側ガングリオンは手の甲側に認めるもので多い疾患の一つです。見た目に膨らんでいるものだけでなく、オカルトガングリオンといった画像検査でのみ診断できるものもあります。
  • 手関節掌側ガングリオンという手首の手のひら側にできるガングリオンもあります。脈を計る橈骨動脈の近くに発生するため、中央よりはおや指側に認めます。
  • キーンベック病は手根骨の一つである月状骨が誘因なく潰れてくる病気です。潰れたり、割れる前に治療することが望ましいです。

手指のしびれ

手指のしびれの部位を示した手のひら、手指のしびれの部位を示した手の甲
おや指側のしびれ
  • 手根管症候群は最も多い絞扼性神経障害で、実際に日常診療で最も治療機会の多い疾患の一つです。手根管というトンネルで正中神経が絞めつける疾患で、典型的症状としてはおや指、人差し指、なか指の3本とくすり指の半分の3.5本にしびれを認めます。
  • 円回内筋症候群なども比較的知られた病気ですが、実際にはほとんど見ません。
小指側のしびれ
  • 肘部管症候群は手根管症候群に次いで多い絞扼性神経障害で、肘にある肘部管で尺骨神経が障害されます。尺骨神経の感覚支配領域であるくすり指と小指の1.5本のしびれと、手の中にある筋肉の麻痺のため、細かい動作が困難となります。
  • Gyon管症候群は比較的多いです。しかしながらTFCCは複雑な形状であり、損傷部位も様々で診察だけで正確な診断は難しいです。
甲側のしびれ
  • 橈骨神経麻痺では手と指の甲側にしびれを認めます。その場合には運動神経麻痺も合併するために手首や指の伸展が障害されます。
その他のしびれ
  • 頚椎症糖尿病などでもしびれを認めますが、末梢神経の支配領域とは異なってまだら状のしびれや、手全体のしびれを訴えることが多いです。

関節リウマチの手疾患

関節リウマチの手疾患の部位を示した手のひら、関節リウマチの手疾患の部位を示した手の甲
指の変形
  • スワンネック変形:第1関節(DIP関節)が曲がって、第2関節(PIP関節)が過度に伸びる状態です。主にPIP関節の炎症が周囲を走行する指を伸ばす腱に悪影響を及ぼす結果、認める変形です。
  • ボタンホール変形:第1関節(DIP関節)が伸びて、第2関節(PIP関節)が曲がった状態となる変形です。病態へスワンネック変形と同じでPIP関節の炎症により認めます。
指の基部での変形
  • 手指の尺側偏位:第3関節(MP関節)で指が小指側に傾く変形です。MP関節の炎症により関節の脱臼と、複数ある指を伸ばす腱がアンバランスとなって発生します。
  • 伸筋腱断裂:手首の関節(手関節)が関節リウマチの炎症により破壊・変形し、それにより指を伸ばす腱(伸筋腱)が断裂することがあります。小指1本もしくはくすり指・小指の2本が多いですが、なか指や人差し指など3本以上の断裂では治療が非常に難しくなります。

骨折などの外傷

外傷は厳密には同じものはなく、個々に応じた診断と治療が必要です。またお子様のケガでは成長障害の危険性もあるため、軽いケガでも痛みや腫れが「いつもと違う」と感じたときには、単なる突き指や打撲と考えて放置しないで下さい。治療の遅れは全ての外傷において、成績不良の最大の要因です。ここでは、頻度の高い外傷と、私の経験から放置されやすく、その結果治療が難しくなるケガを紹介します。

骨折などの外傷の部位を示した手のひら、骨折などの外傷の部位を示した手の甲
第1関節(DIP関節)の痛みと腫れ
  • マレット指は突き指などで高頻度に認める外傷です。DIP関節の痛みと腫れに加えて、多くは指を自分で伸ばせません。骨折のないもの、骨折を認めて骨片が大きいもの、小さいもので治療方法が異なります。骨折のないものなど、腫れや痛みが少ないものがありますのでご注意ください。
  • 末節骨骨折ではドアなどで指先をはさむことで発生します。爪の脱臼を合併する開放骨折を認める例や、亀裂骨折(ひび)のみでは爪下血腫と呼ばれる爪の内出血で激痛を訴える例もあります。
第2関節(PIP関節)周囲のケガ
  • PIP関節脱臼骨折は手の外傷の中で最も治療困難なものの一つです。粉砕骨折では手術が必要ですが、手技的に難しいだけでなく、術後のリハビリも重要です。また単純な骨折でも関節安定性の有無を慎重に判断する必要がありますが、マレット指と同様で突き指で生じ、症状が強くないもので放置例を経験します。
  • 外傷性ボタンホール変形は指を伸ばす伸筋腱が第2関節に付着する部分で断裂して生じます。第2関節が曲がった状態となりますが、受傷直後は腫れもあり見た目の変形は軽度で、第1関節は伸びるために放置例も散見します。
指の切り傷
  • 手指伸筋腱損傷は皮膚の直下、非常に浅い部分を走行しており、また非常に薄い構造ですので単なる切り傷と思っていても損傷されることを経験します。また伸筋腱は小さな損傷で当初は放置されることで指が伸びなくなることもあります。
  • 指神経損傷も切創で損傷しやすい組織です。伸筋腱ほどではありませんが、やはり手のひら側の浅い部分を走行しています。修復術はマイクロサージャリー技術のある手外科医には困難な手技ではありません。しかし放置しますと、痛みやしびれが残るだけでなく、治療も人工神経(神経再生誘導チューブ)を用いるなど神経移植が必要となります。
第3関節(MP関節)周囲のケガ
  • 基節骨基部骨折も非常に多い骨折の一つです。同部の骨折では指を曲げる腱(屈筋腱)や伸ばす腱(伸筋腱)が骨折部で癒着して動きが悪くなったり、骨折部での変形により手機能が低下する合併症もあります。また小児で成長軟骨が損傷しやすい部位でもあります。
  • 中手骨頸部骨折は特に小指に多い骨折です。手を強く握った状態で殴打することにより発生します。ケガの原因などの理由から受診が遅れる患者様を経験します。また頸部より頻度は低いですが、基部の骨折も同様の原因で認め、CM関節という手の中にある関節の脱臼を伴うことも多いです。
  • 伸筋腱脱臼は指を伸ばす腱(伸筋腱)が、手を握りこむ時に拳の頂点から横にスリップする状態です。これは伸筋腱を支える靱帯の障害で、切創などで直接切れた場合には縫合しますが、多くは靱帯が元々弱いために発生します。
手首のケガ
  • 橈骨遠位端骨折は骨粗鬆症に関連する骨折の一つです。中でも本骨折を契機に骨粗鬆症の診断に至ることも多く、骨折治療とともに骨代謝治療についても評価することが大事です。また骨折の合併症におや指が伸ばせなくなる長母指伸筋腱断裂や、手根管症候群、TFCC損傷などがあります。
  • 舟状骨骨折は若年者に多い骨折です。舟状骨が三次元的に捻りのある形状であるために、通常の手首のレントゲンでは診断が困難なときがあります。さらに舟状骨は手関節で多くの骨と関節を形成していることもあり、血流が乏しいために骨折後に骨癒合不全に陥る危険性も高いです。そのため診断後には手術が必要な例も多いです。
おや指の付け根のケガ
  • 母指MP関節尺側副靱帯断裂とその裂離骨折も比較的高い頻度で認めます。おや指はつまみ動作の際に土台となるために、母指MP関節(おや指の第2関節)に強い負荷がかかります。そのため確実な治療が必要で、安定性が得られないと手機能の低下から生活や仕事への支障が残ることになります。ほとんどは外固定のみで治療できますが、断裂した靱帯がひっくり返るなど大きく転位することがあり、その際には手術適応です。
おや指の付け根のケガ
  • 第1CM関節脱臼骨折の頻度も比較的高いです。CM関節は手の中にある関節で、特におや指が三次元的に動くために重要な関節です。また関節内骨折はなく、CM関節を形成する中手骨の関節の少し指先側での基部骨折も多いです。