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整形外科

Orthopaedic

腰を気にする患者

整形外科について

整形外科は運動器を治療することを専門とします。運動器という言葉を聞き慣れない方も多いと思いますが、循環器や消化器といった内臓器官と同様に身体を動かす器官の総称で、骨、関節、腱、末梢神経、筋肉を指します。

治療について

整形外科医は骨折などの骨の治療はもちろんのこと、頭部と内臓を除く身体のほとんどを治療します。広い分野を扱ううえ、医療は日進月歩のため治療の種類も日々増えています。そこで様々な分野に細分化され、膝関節、脊椎(首・腰)、股関節、手、スポーツ、肩・肘、腫瘍、関節リウマチ、小児、リハビリなどの分野があり、それぞれの専門家が日々努力しています。様々な部位で本当に多くの疾患がありますので全てを書くことはできません。

詳細は当院にご相談ください

このホームページではまず整形外科で行う治療方法と検査方法を述べさせていただきました。次に各疾患の特徴や治療法を簡単に記載しました。当クリニックでの治療が皆様の役に立てれば幸いです。

整形外科の保存的治療

外用貼付薬

保存的治療とは手術以外の治療方法で、整形外科の主要な治療方法です。当クリニックでも、診断後にまず行う治療です。身体への侵襲は少ない治療ですが、薬物治療や注射治療では胃腸障害、腎障害、心血管イベントなどの内科既往症に注意が必要です。

薬物治療

鎮痛剤

抗炎症剤の飲み薬や貼り薬、弱オピオイドや、貼り薬で経皮的に体内へ投与することで副作用を少なくできる抗炎症剤もあります。このように様々な種類があり、患者様の内科的疾患などを考慮して、できるだけ副作用が少ないものを選択します。特に外傷や急性炎症など一時的に服用する場合と、腰痛など慢性的な痛みに対して長期に用いる場合では、使い方が大きく異なります。

神経由来のしびれや痛みの薬

ビタミンB12製剤とワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤は以前からしびれを伴う様々な疾患に用いられます。プレガバリンやミロガバリンといった痛みを伝える経路を選択的にブロックするお薬も、末梢神経障害に由来する痛みやしびれに用います。

抗菌薬

整形外科が扱う運動器は、内臓とは違って外気に触れることがなく全くの無菌状態です。そのために切り傷などの怪我や、処置後、手術後にも服用します。それ以外に爪周囲は細菌感染を認めやすく、その際には抗菌薬内服を行います。また骨の細菌感染はを骨髄炎と言い、う歯(虫歯)と同様で病巣部の切除を要することも多いですが、抗菌薬内服が有効なときもあります。また、炎症が強い場合や汚染が強い創部などでは、内服でなく点滴で抗菌薬を全身投与します。

骨粗鬆症治療薬

骨粗鬆症の治療は、言うまでもなく整形外科が得意なものの一つです。よく使われるビタミンD製剤は、骨だけでなく筋肉への効果を示す研究も多いです。閉経後骨粗鬆症に対しては女性ホルモンであるエストロゲンの受容体を介して作用するラロキシフェンやバセドキシフェンといったSERM製剤があります。最も用いられるのは、破骨細胞の働きを抑えることで骨吸収を抑制する内服薬や注射剤で、週1回、月1回、半年に1回の使用でよく、通院回数や服用の手間をおさえることができます。それ以外にもホルモン製剤や抗体製剤の注射治療もあり、骨吸収の抑制に加えて、骨形成促進作用があり、骨粗鬆症治療において強力な武器になります。

関節リウマチ・痛風治療薬

ステロイド剤や非ステロイド系抗炎症薬を用いて関節炎による症状を抑える以外に、関節リウマチでは免疫抑制剤を用いて治療します。メトトレキサートという免疫抑制剤を血液検査の結果を目安に増減しますが、近年では生物学的製剤という抗体製剤を用いることで高い治療効果が得られています。また痛風も発作時だけでなく、痛風の原因である高尿酸血症に対して内服でコントロールを行います。

局所注射治療

ステロイド局所注射

少量の懸濁性ステロイドを用います。手指や肩・肘の腱鞘炎をはじめ、特に上肢疾患ではよく用います。炎症と腫れの抑制は短期では効果的な方法ですが、一回の注射で治癒できることもあります。また治療であると同時に、最終診断の目的もあります。

トリガーポイント注射

痛みのある部位に局所麻酔薬や鎮痛剤などを注射します。腰部や臀部、頸部などに多く用います。薬の内容からも効果が一時的であることは明らかですが、副作用のある鎮痛剤の使用量を少なくできるため、慢性的な痛みには有用と考えています。

関節腔内ヒアルロン酸注射

肩と膝関節が適応です。軟骨の栄養剤であるだけでなく、粘性が強く物理的なクッションも期待します。確実に関節腔や滑液腔内へ注射することが重要ですので、経験による手ごたえだけでなく、エコーを用いることも多いです。

末梢神経ブロック

腰椎や頸椎の椎間板ヘルニアにおいて、抗炎症剤で効果が乏しい場合に、責任部位の神経根にレントゲン透視を用いて局所麻酔薬を注射します。それ以外にエコー下での神経ブロックも有用なことがあり、坐骨神経や腕神経叢(鎖骨周囲の上肢の神経が集まった部位)ブロックも確実に行うことができます。

リハビリ

運動器リハビリ

理学療法士、作業療法士による徒手での運動訓練です。関節可動域を改善させる訓練を主に、自分自身で関節を動かすこと、低周波や超音波刺激の補助、筋力強化など一人ひとりに合わせた方法で精一杯行います。関節痛や動きに対する訓練に加えて、改善した状態を維持するためのアドバイスもさせていただきます。何でもご相談ください。
また当院では手の専門リハビリ(ハンドセラピィ)にも力を入れており、専門スタッフ(ハンドセラピスト)の訓練では、スプリント作成や治療機器を用いての手技も行います。また治療前後の機能評価も専門性が強く、これによりご自身の数値化された状態から効果を実感して頂けます。

物理療法・消炎鎮痛処置

当院でも整形外科診療で用いるリハビリ機器を用意いたしました。痛みの部位や程度に応じて、温熱、低周波、電気刺激、超音波刺激、牽引により、血流を増やし、筋緊張をやわらげることで、様々な部位の痛みを改善させます。またウォーターベッドや、血液やリンパ液の流れを改善させる器材とマッサージ機器も準備しております。それ以外にも歩行や生活動作のため、筋力強化の改善を目的としたトレーニングマシンもご活用ください。

外固定・装具療法

コルセット・ネックカラー

脊椎の安静を目的に行います。腰は上半身の、首は頭部を支えているために常に起立・歩行状態では常に負荷に曝されています。この負荷を骨盤や肩に逃がすことが主な目的です。疾患部位に応じて義肢装具士とともに適切な範囲の装具を作成させていただきます。

トリガーポイント注射

足関節固定装具:捻挫による靱帯損傷や骨折の頻度は高く、当初は損傷による腫れに対応するため副木で固定しますが、腫れの軽減を確認後には固定装具へ変更して治療を行います。手術による内固定後にも関節安定性を付与するために用います。

関節腔内ヒアルロン酸注射

足底板:足底腱膜炎、扁平足、アキレス腱炎のための治療装具です。アキレス腱断裂の治療後にも必要です。

末梢神経ブロック

手関節固定装具:治療では金属の入った硬性の装具を用います。TFCC損傷などの手くびの靱帯損傷では最初に試みるべき治療方法です。橈骨遠位端骨折でも外固定や手術後に用いることが多いです。また母指CM関節症でも手くびを含む治療装具は多いです。

外固定

ギプス固定は現在も外固定の代表格です。ギプスの目的は関節の固定で、高い固定性が必要なときは全周性に巻きます。ずれの少ない骨折や、手術で固定性が高い場合には支柱となるようにギプスを用いる固定も多いです。

整形外科での主な検査

単純X線(レントゲン)

整形外科では、ほぼ全ての患者さんに行います。古典的な検査ですが、骨折など骨の評価では現在でも最も重要な検査です。それ以外に関節の変性所見や腫瘍性病変の評価にも重要です。

関節造影

関節内にX線撮影で白く写る造影剤を注入して、レントゲン撮影を行います。これによりレントゲンでは分からない関節内構造物の所見を評価できます。歴史的には膝関節の半月板損傷や肩関節での腱板断裂の診断に用いられましたが、現在はMRIで診断されます。しかし手関節尺側部痛の代表的疾患であるTFCC損傷は小さい組織のため、MRIでの診断が困難なことも多いです。そのため関節造影が診断のために重要です。

採血・検尿

整形外科では採血は炎症の評価に用いることが最も多いです。きずから膿みを認める創部感染や、化膿性関節炎の程度を評価します。また関節リウマチなど炎症性疾患の評価にも重要です。炎症以外では骨粗鬆症の診断治療の目的で骨代謝マーカーを評価します。

骨密度測定装置

二種類のX線の吸収率の差から骨密度を測定します。本邦では若年成人の骨密度の平均値を基準にして骨量を表します。また、この検査で用いられるX線量は単純X線よりもさらに少ないです。

エコー

骨以外の軟部組織(筋、腱、靱帯、神経など)の評価に非常に重要な検査です。外傷による筋損傷(肉離れ)、アキレス腱や肩腱板などの腱断裂、捻挫で生じた靱帯損傷、末梢神経障害といった軟部組織疾患のほとんどを可視化して診断できます。さらに腱鞘内注射や神経ブロックでも正確な手技を可能し、現在の整形外科診療での強力なツールです。

神経伝導速度検査

末梢神経障害の診断は診察による神経学的所見が最も重要ですが、神経電動速度検査は客観的評価のために有用な補助診断です。末梢神経の刺激は筋肉などの標的組織に一瞬で伝わりますが、わずかに遅れを生じます。これを潜時と呼び、刺激電極と記録電極を用いて潜時を2ヵ所で測定して伝導速度を測定します。

CT、MRI

ともに運動器の組織を細かいスライスで評価する画像検査です。CTはレントゲンと同じX線を用いるため骨の評価に有用です。また輪切りの像だけでなく、長軸に再構成したり、3D画像にして骨折部を詳細に評価できます。またMRIは骨に加えて軟部組織の評価に有用です。特に膝関節の半月板や、脊椎における脊髄など骨に囲まれた軟部組織の評価に最も力を発揮します。検査機器が大変高額で、解像度が高いものではさらに高額となります。近隣の病院で撮影していただくように当院から検査の予約をさせていただきます。

外傷

ギブスをした足

外傷は受傷の原因や、年齢などの患者背景によって様々です。このサイトでは比較的頻度の高い外傷について述べますが、それ以外にも様々な部位で、様々な組織が損傷します。日常的におこる打撲や捻挫であれば構いませんが、通常よりも痛みや腫れが強い場合や症状が長く続くときには早めにご相談ください。

骨折

骨折は整形外科治療を行う代表格であることは言うまでもありません。様々な部位において、転倒や事故などの直接の外力(直達外力)や、過度な捻りなど(介達外力)により発生します。骨折の起こる体の部位、骨折の程度により治療も様々です。共通しているのは初期には骨折部位に強い痛みがあること、変形治癒では機能障害の危険性が高いことです。治療は一人ひとりに合わせた対応が必要です。
一般的な骨折の治療は、①整復(骨折のずれを直す)、②整復後の固定、③リハビリなどの後療法で、骨の癒合だけでなく機能を獲得することがゴールです。
また骨折の整復では痛みをとるために麻酔は必須です。当院でもエコーを用いた神経ブロックで確実な徐痛を行います。固定はギプスや副子などの外固定をまず行います。残念ながら、外固定では骨折部の安定が不十分な場合には手術で内固定を行います。 以上が基本ですが、ずれが少なくても骨癒合が難しい骨や、関節機能の低下が予想される部位、また仕事やスポーツなど患者様の生活様式を十分に考慮して治療方法を決定します。

  • 骨粗鬆症に関連した高齢者に多い骨折として以下の4つの骨折があります。背骨の脊椎椎体骨折(特に胸腰椎移行部)、股関節では大腿骨近位部骨折、手首での橈骨遠位端骨折、肩関節の上腕骨近位端骨折が4大骨折として有名です。脊椎椎体骨折は保存的に治療されますが、それ以外では早期に生活に復帰するために手術治療が行われます。また肘関節の上腕骨遠位部骨折、膝関節の大腿骨遠位部骨折、骨盤の恥坐骨骨折も比較的よく認めます。
  • 足首の骨折は下肢の骨折で最も多いものの一つです。足首をひねったり、直達外力により骨折します。特に外くるぶしが折れる足関節外果骨折の頻度は高いです。同時に脛腓靱帯損傷や内くるぶしの骨折(足関節内果骨折)を認めることも多く、画像など慎重な診断が必要です。ずれが少ない場合はギプスなどの外固定で治療しますが、多くは手術(内固定)が必要です。
  • 手指の骨折も突き指など、日常の生活やスポーツでよく認めます。骨折部位は多岐にわたっており、代表的なものを手外科のページに記載しています。
  • 手首には手根骨という小さな骨が7+1個ありますが、その中でおや指側にある舟状骨の骨折(舟状骨骨折)は10-20歳代の若年に多く認めます。手をついての受傷が多いですが、舟状骨は3次元的に捻りのある形状のためレントゲン診断が難しいことがあります。また受傷直後は腫れが強いですが、治療しなくても腫れと痛みが軽減するものもあり、これも診断の遅れの原因です。
    舟状骨骨折は診断だけでなく、骨癒合を得るのも難しく骨癒合不全から偽関節となる危険性もあります。偽関節の放置では高頻度で変形性手関節症に陥ります。そのため確実な骨癒合を目的に手術治療となることは多いです。手外科のページもご覧ください。
  • 肘では肘頭骨折という肘をつく部位での骨折が多いです。上腕三頭筋という肘を伸ばす大きな筋肉が付く部位ですので、骨折部の大きくずれることが多いため、ほとんどは手術が必要です。
  • 上腕骨顆上骨折は小児の肘周辺の骨折では最も多いです。骨折部のずれが強いものでは血管や神経に関連した合併症の評価が重要です。多くの例で手術が行われます。また骨癒合後も変形(内反肘)や可動域制限の危険性があり、その際には追加の手術加療が検討されます。
  • 上腕骨外顆骨折も小児の代表的骨折の一つで顆上骨折の次に多いです。この骨折は骨癒合不全となる危険性があり、ずれが小さいものでも手術が検討されます。骨癒合不全(偽関節)になると、将来的に尺骨神経麻痺をきたすために、長期にわってのフォローアップが望ましいです。
  • 鎖骨骨折は直達外力だけでなく、転倒して手をつくなど介達外力でも発生します。骨折部位、骨折の程度、年齢を中心に治療方法を決めます。
  • 肋骨骨折は日常診療でよく認めます。肋骨は左右各12本認め、走行も背部から胸部へ下方に回り込んでいるために、重なりがあってレントゲンで分からないことも多いです。治療は保存的に行います。
  • 膝蓋骨骨折はいわゆる「膝の皿」の骨折です。大腿四頭筋という太ももの前面にある筋力の強い筋肉に引っ張られるため、横に骨折がある場合には大きく転位します。転位が少ないものは保存的に治療しますが、転位が大きいものでは手術が必要です。
  • 踵骨骨折は足のかかとの骨の骨折です。転落してかかとから落ちた時に認めます。骨折のずれが大きい場合には手術ですが、歩行時などに体重負荷がかかる部位ですので、骨癒合後にも痛みが残ることもあるため、根気よく治療させていただきます。
  • 中足骨骨折も頻度は高いです。特に第5足趾(小趾)では、サンダルなどから足がすべり落ちた際によく認めます。この部位では骨折のずれが大きくても保存治療で良好な治癒経過です。また第5中足骨では疲労骨折を生じることがあり、その場合には経皮スクリューなどの手術治療を行うことも多いです。
  • 足趾の骨折も直達外力により高い頻度で認めます。しかしながら、機能障害は軽度のために保存治療がよい適応です。
  • 腕骨、2本の前腕骨(橈骨、尺骨)、大腿骨、2本の下腿骨(脛骨、腓骨)は長管骨と呼ばれ、この中央部(骨幹部)は骨皮切が厚く骨強度が高いです。ゆえに四肢長管骨骨折は転落や交通外傷といった高エネルギー外傷で認めることが多いです。そのため頭部や重要臓器の損傷を合併している危険性もあり、全身状態を含めて大きな病院での精査加療が必要です。一方、低エネルギーでの四肢長管骨骨折は病的骨折の鑑別が重要です。
捻挫、靱帯損傷、脱臼

関節が過剰な外力により生理的範囲を超える動きを強制された結果、骨と骨を連結する靱帯が損傷されたものを捻挫といいます。靱帯が完全に断裂して関節が不安定なものでは長期間の外固定と生活上の制限が必要です。さらに程度が強く、関節適合性が失われた状態が脱臼です。脱臼は即時に整復が必要ですが、関節安定性、損傷・断裂の状態を診察・画像で評価して治療を決定します。
多くは初回脱臼では保存的治療を行います。安静・外固定を適切に行うことで多くは治療できます。しかし靱帯の修復が得られない場合や、脱臼を繰り返すことで骨にも病変が及ぶと反復性脱臼となります。また靱帯の転位が強い(靱帯の断裂端が大きくずれる)場合には初回治療から手術が必要です。

  • 肩関節脱臼は最も頻度の高い脱臼です。関節唇とよばれる関節包靭帯が修復されない場合には反復性脱臼に移行する危険性があります。肩・肘関節外科のページもご参照ください。
  • 肩鎖関節脱臼は鎖骨と肩甲骨肩峰の間にある関節の脱臼です。損傷の程度が強いと鎖骨が上方に転位します。肩・肘関節外科のページもご参照ください。
  • 肘関節脱臼は2番目に多い脱臼です。整復後の関節安定性の評価が重要です。靱帯断裂を認めて不安定性が強い場合には靱帯修復術を行います。
  • 手指関節脱臼は多い外傷の一つです。側副靭帯断裂や掌側板と呼ばれる手のひら側の靱帯に損傷を認めることが多いです。整復後に、関節適合性がよければ保存的に治療できることが多いです。関節内骨折が合併するなど関節適合性が悪ければ早期の手術が必要です。手外科のページもご参照ください。
  • 母指MP関節側副靱帯断裂も他の手指靱帯損傷と同様に保存的に治療しますが、断裂した靱帯がひっくり返るようにずれることがあります。特に小指側の側副靭帯ではそのような断裂を認めることがあり、治療方法を決定するために十分な評価が必要です。手外科のページもご参照ください。
  • 膝蓋骨脱臼は膝関節にて膝蓋骨(お皿の骨)が大腿骨の外側に脱臼します。若い女性に多く、骨の形状など先天的な素因もあります。初回脱臼では保存的治療を行います。繰り返し脱臼する反復性脱臼では手術も考慮します。
  • 膝関節側副靭帯損傷:膝関節の内側と外側にある側副靭帯の損傷です。内側に多く、保存的治療を行います。
  • 半月板損傷:外側では円板状半月という損傷しやすいもので、内側では前十字靱帯損傷など関節不安定性に関連した損傷が多いです。安静やリハビリなどの保存的治療を行いますが、症状が改善しないものや、ロッキング症状という関節の動きがかたまるもの、引っかかり感の強いものでは関節鏡で手術を行います。
  • 前十字靱帯損傷:関節内靱帯のために自然修復は困難です。画像上の修復が得られた場合にも機能的に前方への安定性が得られていないこともあります。そのためスポーツの継続をご希望される場合には手術治療を検討します。
  • 足関節脱臼骨折は、下腿の骨、特にくるぶしの骨折が大きくずれて発生します。治療は手術が必要となることがほとんどですが、腫れが強く皮膚の状態が悪いために、まず創外固定で患部の安静を保ってから内固定という二期的手術が行われることもあります。
腱断裂、筋損傷

腱は筋肉の収縮力を骨に伝えて骨を動かすための組織です。そのため腱の完全断裂を認めたときには、当該関節を動かすことができません。開放創のある腱断裂は容易に診断できますが、傷のない皮下断裂では神経障害との鑑別も重要です。治療は完全断裂の場合には手術が必要なものも多いですが、アキレス腱断裂など保存的に治療できるものもあります。
筋損傷はいわゆる肉離れです。筋損傷は診察で診断しますが、エコー検査に損傷は明らかです。下腿の腓腹筋内側が好発部位です。また太ももの後ろにあるハムストリングス(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)、前面の大腿四頭筋の筋損傷も多く、上半身では頻度は少ないですが大胸筋損傷などスポーツに関連して発生します。筋損傷の治療は保存的に行いますが、再発しないように慎重な治療が必要です。

  • アキレス腱断裂:アキレス腱は下腿にある腓腹筋とヒラメ筋の腱で、踵の骨に付着します。スポーツ復帰など生活への支障の程度をもとに治療を決めることが多いです。
  • 腓腹筋損傷:アキレス腱と同様の機序で発生します。程度によっては外固定をすることもありますが、まずは安静とします。多くは1週前後で痛みが軽減しますが、再発を予防するために、リハビリで関節をゆっくり動かしていきます。軽症で3週程度、中等症から重症では6週から12週かけてスポーツなどへの復帰を目指します。
  • ハムストリングス損傷:陸上やサッカーなど全力で走るスポーツに多いです。
  • 外傷性頸部症候群:頸部(首)は大きくて重い頭を支えているために交通外傷などの衝撃により頭が振られることで、頸部の筋肉などが損傷する外傷の総称です。いわゆる「むち打ち」も含まれます。神経損傷に関する診察は重要です。治療は投薬やリハビリなどの保存治療で、生活や仕事ができるレベルを少しでも早くに獲得することが目標です。
  • 中心性頸髄損傷:外傷性頸部症候群のように頸部に強い衝撃が加わった際に頸髄(頸部での脊髄)が損傷されことがあります。上肢、ほとんどは手指に感覚異常(しびれ感、過敏、鈍麻)を訴えます。安静と投薬で治療しますが、感覚異常は遺残することがあります。
  • 腰椎捻挫:交通事故などで腰部の筋肉などが損傷します。痛みが長期化することもあり、投薬やリハビリで根気よく治療します。
  • 肩腱板断裂、上腕二頭筋長頭腱断裂、大胸筋断裂など肩周辺でも筋損傷や腱断裂は多いです。ただし、1回の外傷で発生するもの以外に慢性的な要因で発生するも多いです。肩・肘関節外科のページもご参照ください。

疾病

肩をおさえる女性

整形外科の疾病も外傷と同様で、様々な部位で多くの種類があります。そのため疾患も多岐にわたっており、厳密な診断は簡単ではありません。しかし診断と同様に重要なことは、どのような治療を行うかを判断することで、できれば診断と並行して治療を開始していきます。そのためには患者背景(年齢、性別、病歴など)に加えて、問診(症状のある部位、症状の種類や程度、職歴、スポーツ歴など)、診察(身体学的所見、神経学的評価)、画像検査(レントゲンなど)などが必要です。診察ではもちろんのこと、診察前の問診や評価にもご協力ください。また上肢の疾患は手外科のページ肩・肘関節外科のページもご参照ください。

首の痛み

頸部(首)には中枢神経である脊髄と、それから枝分かれした末梢神経があり、手足の動きだけでなく、呼吸などの生命維持にも重要な組織が存在しています。そのため、診察においては四肢の神経症状の有無は非常に重要となります。

  • 頚椎症:頸部(首)は7つの骨で構成されていますが、それらをつなぐ靱帯や、クッションである椎間板などに傷がついて、骨やアライメントも変形することで起こります。一般的には首から肩にかけての痛みや、肩こりなどの症状を認めます。また四肢の感覚障害や運動障害などはなく、診断には問診や神経学的異常所見が無いことが大事です。
  • 頚椎症性神経根症:頚椎症により脊髄から枝分かれした神経根が障害される状態です。うでに強いしびれ感と痛みを認めます。ほとんどは薬の服用により、改善します。
  • 頚椎症性脊髄症:頚椎症により脊髄が障害される病気です。手の細かい動作の障害や、ふらつきなどの歩行障害が問題です。中枢神経の障害であり、回復のためには手術により脊髄の除圧が必要となり、診断後速やかな治療が必要です。
  • 頸椎椎間板ヘルニア:頚椎症が加齢性変化に関連して起こるのに対して、椎間板ヘルニアでは7つの骨の間にある椎間板の一つが脊髄や枝分かれした神経に対して突出して機械的・化学的に障害します。この場合も脊髄症状があれば早期の手術が必要ですが、枝分かれした神経の症状であれば保存治療で治癒することが多いです。
腰の痛み

頸部の痛みでも述べましたが、脊椎疾患では神経学的所見が非常に重要で、腰椎疾患では下肢の神経診察を行います。特に手術などの大きな治療の適応を決める時には神経症状が重要です。しかし腰椎では頸椎とは異なり、基本的には中枢神経の症状はなく、神経症状に加えて下肢痛の程度も治療選択には重要です。

  • 腰痛症:整形外科で最も多い疾患の一つです。画像と診察が一致するものでは下記に述べる疾患を考えますが、明らかな原因が特定できないものも多いです。いわゆるぎっくり腰は急性腰痛、慢性的な痛みで画像上明らかな所見がないものは筋・筋膜性腰痛など様々な病名で診断されます。
  • 変形性脊椎症:加齢や外傷などにより腰椎(こし骨)間の関節や椎間板の変性、または骨変形を生じて腰痛を認めます。
  • 腰椎椎間板ヘルニア:ヘルニアとは「飛び出す」という意味で、椎間板ヘルニアは5つある腰椎(こし骨)の間にある椎間板が後方に飛び出したものを指します。画像上のヘルニアに病的意義は少なく、突出により物理的・化学的に神経障害をきたして下肢神経症状(多いのは坐骨神経痛)には治療が必要です。投薬治療、リハビリで改善するものも多く、改善がないものでも神経根ブロックや硬膜外ブロックといった注射治療が有効です。これらでも治療困難な例に手術治療を検討しますが、近年では酵素療法もあり専門医に紹介させていただきます。
  • 腰部脊柱管狭窄症:椎間板ヘルニアとは異なり、高齢の方に多い疾患です。椎間板変性や、腰椎を連結する後縦靭帯や黄色靭帯が肥厚して、脊柱管(下肢の神経の通り道)が狭くなる疾患です。特徴的な症状として間歇性跛行があり、歩行中に下肢の痛みやしびれ、しめ付けといった症状が出現します。連続での歩行が困難で、歩行と休憩を繰り返します。間歇性破行の程度や、神経症状の程度によっては手術が必要となります。下肢神経症状のない画像上の脊柱管狭窄で、腰痛が主体の方には保存的治療をおすすめします。
胸部・背部の痛み

この部位の痛みに対しては、整形外科が扱う運動器の障害だけでなく、重要臓器の評価はさらに重要です。そのため外傷のない痛みでは内科医へのコンサルトを検討します。

臀部・股関節の痛み

腰由来あるいは股関節由来の症状であるかを判断することが重要ですが、多くは動作時痛の有無などで鑑別できます。

  • 上臀神経痛:腰椎病変に関連した病態です。臀部の上方で圧痛があり、投薬や注射、リハビリといった保存的治療を行います。
  • 変形性股関節症:先天的に股関節の屋根が小さい(寛骨臼蓋形成不全)方に認めます。多くは50歳前後で股関節痛が強くなり受診されます。その時にはレントゲンで骨棘という骨のとがり、関節の隙間の狭小、さらには球形の関節の形態が変形します。疼痛が強くなり、歩行などに支障がある場合には筋力が低下する前に手術を検討したいです。また若年で変形が少ない臼蓋形成不全では、人工関節ではなく骨切り術の適応も検討されます。
  • 特発性大腿骨頭壊死:原因は不明ですが、飲酒などの様々な関連要因が考えられています。初期はレントゲンで骨頭壊死は分からないこともありますが、MRIでの診断が有用です。壊死部が潰れるなど進行する際には強い痛みを認めます。潰れたものでは人工関節置換術を検討します。潰れる前であれば温存治療もあるため、早めの診断が大事です。
下肢全体の痛み

下肢全体の痛みや、大腿(ふともも)全体の痛み、下腿(ふくらはぎ)から足にかけての痛みなど、下肢の比較的広範囲に認める症状は、腰椎での神経障害であることが多いです。

  • 根性坐骨神経痛:臀部から大腿(ふともも)にかけて下肢全体の痛みは臀部から下肢後面にかけて痛みを訴えます。整形外科の日常診療において頻度の高い疾患です。下位腰椎での障害が原因であることがほとんどです。
  • 大腿神経痛:上位腰椎での障害では下肢の前面に症状を認めます。
膝の痛み
  • 変形性膝関節症:整形外科で最も多い疾患の一つです。進行した変形性膝関節症での診断は身体所見、患者背景、レントゲンで容易にできます。しかしレントゲンで異常所見がほとんどないことも少なくありません。他の疾患も十分に鑑別する必要があります。治療は内服・外用薬による鎮痛から行うことが多いですが、ヒアルロン酸注射や筋力強化・生活指導などのリハビリも行っていきます。手術では最終的には人工関節置換術が行われますが、それ以外にも様々な治療方法があります。
  • 特発性大腿骨内顆骨壊死:大腿骨の内側顆という部分に生じる骨壊死で、強い痛みを訴えられますが、レントゲンでは明らかな異常がないことも多いです。MRIにて同部に炎症が強い所見を認めます。また骨壊死という病名ですが、原因は不明で実際は脆弱性骨折の可能性も考えられています。また膝関節の大腿骨の下側の脛骨にも同様の異常を認めることがあります。
  • 膝関節周囲の靱帯炎・付着部炎:膝関節では靱帯・腱付着部が多く、同部はランニングなどのスポーツにより膝関節の繰り返し運動により痛みを生じることがあります。解剖学的に膝蓋靱帯炎(膝の中央)、鵞足炎(膝の内側の縫工筋、半腱様筋、薄筋の付着部)、腸脛靭帯炎(膝の外側)と呼ぼれます。患部の安静やスポーツ活動の制限が重要ですが、疼痛が長期間に及ぶ場合にはエコーを用いての注射も検討します。
足首の痛み
  • 変形性足関節症:足関節にも変形性関節症があり、他と同じで保存治療から開始しますが、疼痛や歩くことに障害が強いものでは手術を検討します。足関節では関節固定術が選択されることが多いですが、周囲の関節でも動くために固定後の障害は多くありません。
  • アキレス腱炎・周囲炎:アキレスの踵骨付着部やその少し上に痛みがあることが多いです。ランニングなどのスポーツによる負荷で生じることが多いです。装具や鎮痛処置、リハビリなどの保存治療で治療します。
足・足趾の痛み
  • 外反母趾:外反母趾は、その名の通り第1足趾が付け根の関節(MTP関節)から外側(第5足趾方向)に変形します。実際には、外反だけでなく足の横アーチの低下や回旋変形も加わっていることが多いです。装具による保存治療が主体ですが、痛みや変形が強い場合には手術治療も検討します。
  • 足底腱膜炎:足底腱膜が踵骨に付着する部位に圧痛があり、多くの方が足裏のかかとに痛みを訴えます。スポーツが原因のことは多いですが、お仕事や生活上の動作でもたくさん歩く方にも多いです。時間がかかる場合もありますが、装具、鎮痛処置、リハビリといった保存療法で根気よく治療します。
  • 痛風:第1足趾のつけね(MTP関節)に赤みを伴った腫れと強い痛みを認めます。尿酸の高値が原因で、大部分は男性に認めます。急性期には抗炎症治療を、炎症が落ち着いたら尿酸コントロールを内服で行います。
  • 陥入爪:いわゆる巻き爪です。爪甲が食い込むように弯曲し、同部の発赤や腫脹を認め、細菌感染をきたすこともあります。その場合には抗菌薬の投与を行います。程度の強い陥入爪では手術を考慮することもあります。

冒頭でも述べましたが、本ページで紹介したものは整形外科疾患のほんの一例です。よくある疾患と似ていても全く異なる病態もあり、正確な診断こそが良い治療の第一歩です。私どもを含めた整形外科クリニックを皆様の幸せにお役立てください。