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手術治療

Surgical treatments

手術着の医師の手元

日帰り手術について

皆様が手術を避けたいと考えていることは十分に理解しています。しかし手外科の手術は、細かくて難しいですが、患者様への侵襲は大変小さい処置です。実際に短時間の処置で長く苦しめられた痛みから解放されるものもあり、治療経過や症状に応じて検討させていただきます。
また麻酔は局所麻酔や伝達麻酔(神経ブロック)で行うことがきますので、術後すぐに歩行ができ、ほとんどのもので入院は必要ありません。実際には術後の状態や手術の程度により、手術後すぐにお帰りいただくことや、2-3時間ほど病院で安静にしてからお帰りいただきます。
また当院では手術に関連した感染対策のため、手術器材の滅菌には高圧蒸気滅菌器ST(三浦工業)を、手術室には空調システム(class 10000)も備えおり、安心して治療をうけていただけます。

  • 高圧蒸気滅菌器ST
    高圧蒸気滅菌器ST
  • 手術室
    手術室

費用について

費用に関しては3割負担の場合の手術手技料を別に示します。それ以外に麻酔や点滴などの薬剤の費用、麻酔手技料、また金属固定材料や人工靭帯などのインプラントの材料費が必要となります。

麻酔について

局所麻酔

手術をする部位に直接注射で麻酔薬を注入して痛みをとる方法です。手のひらへの注射は苦痛が強く、少しでも皆様の苦痛を減らすために様々な工夫をし続けています。

伝達麻酔(エコー下での神経ブロック)

古典的には動脈の拍動を触知して解剖学的知識をもとに神経あるいは周囲に麻酔薬を投与していました。現在はエコーの進歩により末梢神経はよく見える組織となり、私も10年以上前よりエコー下に行っています。そのため麻酔が必要な神経を任意にブロックして痛みを完全にとります。この麻酔により手指、手首、前腕、肘、上腕は確実な除痛のもと日帰り手術ができます。また肩や鎖骨も部位によって伝達麻酔で対応できます。
また上肢だけでなく下肢に対しても伝達麻酔は有用な麻酔方法です。歩行を制限しない部位や、足首などでは松葉杖で体重をかけずに歩行できる方は日帰り手術を検討できます。

  • 局所麻酔
    局所麻酔
  • 伝達麻酔(エコー下での神経ブロック)
    伝達麻酔(エコー下での神経ブロック)

入院手術について

全身麻酔が必要な場合や、術後の移動を制限するなど長期間の安静が必要な手術はご協力いただく病院で、病室と手術室を借りて対応いたします。

術前検査について

内科的疾患や、スタッフに対する感染リスクの有無について血液検査や画像検査を行います。また術前に休薬が必要な薬剤(血液を固まりにくくする薬、糖尿病薬など)についても説明いたします。

疾患

骨折手術

まず外科用X線テレビ装置を用いて骨折部位を整復します。手指骨折の多くは整復位を保つために、皮膚を切開せず鋼線で固定します。骨折のずれが大きい関節内骨折や、手くびより中枢側では切開して骨折部を整復後に金属固定材料を用いて内固定します。

外科用X線テレビ装置の写真
腱に対する手術

断裂した腱を縫合糸で修復します。腱は修復能力が乏しい上に縦方向の線維性組織であるために、線維を噛み込むように強固で確実な縫合が必要です。さらに術後には周囲組織とくっついてしまう癒着も必発ですので、周囲を傷つけない正確で丁寧な操作が重要です。
また腱が慢性的刺激により擦り切れたものは修復不能で、腱移植術や腱移行術が必要です。腱の手術は手術手技・リハビリなどの後療法も専門性が強く、経験が必要な治療です。

神経に対する手術

損傷・断裂部をマイクロサージャリーと呼ばれる顕微鏡下での修復を行います。指神経や皮下にある皮神経は、安静のため術後の外固定は必要ですが、手術は局所麻酔や伝達麻酔で十分に可能です。また手首より中枢側の損傷では、手術時間も長くなるために全身麻酔や入院を要することが多く、ご協力くださる病院で治療します。

関節に対する手術

障害のある関節により術式は様々です。一般に第1関節では関節固定術、第2関節では人工関節、母指CM関節では関節形成が多いです。また疾患の重症度や、仕事など患者背景により関節固定術を行うこともあります。逆に軽度のものでは骨切り術や関節鏡下手術も行われます。

関節鏡下手術

骨と骨を連結する関節腔に灌流液を充満して、同部に関節鏡というカメラを挿入します。関節を切開しても観察できない深部の処置も、小さな傷で可能です。
上肢では手首が最も関節鏡手術を行う部位です。特に手首にあるTFCCという靭帯の損傷は診断・治療に関節鏡が必須です。同様に手首のガングリオンも関節鏡下手術が有用です。原因である関節内滑膜と関節包を含めて関節鏡下に切除します。またMP関節(おや指では第2関節、それ以外の指では第3関節)や、母指CM関節という親指の根本にある関節に対する関節鏡下手術も行っています。さらに当院では手根管症候群の手術も関節鏡を用いることを基本としています。

皮膚欠損の再建手術

ケガなどで皮膚が欠損すると深部組織が障害されるため、他の皮膚で覆う必要があります。骨や腱が露出していないものでは植皮術という採取した皮膚を貼り付ける方法で対応できます。しかし骨や腱が露出するキズには皮弁術という皮膚移植が必要です。神経と同様、手指では当院で行い、手首より中枢ではご協力くださる病院で行います。

創外固定術

骨や関節の病巣部ではなく、その末梢と中枢にワイヤーを刺入して体外で装着する手技です。骨折の固定だけでなく、牽引もできるために関節を動かす治療や骨を延ばすこともできます。また時間経過の長い関節内骨折にも二期的手術とはなりますが有用です。

下肢の手術

当院で行う場合には松葉杖などで荷重を避けて歩行できることが条件ですが、足首の骨折や靭帯断裂、アキレス腱断裂などに対応させていただきます。

手術術式の紹介

包帯の巻かれた手

比較的よく行う手術術式の内容を簡単に述べさせていただきます。ほんの一例ですので、それ以外にも様々な方法があります。ここには述べませんでしたが、私は小関節の関節鏡下手術もよく行いますので、手首や指の関節内骨折に対して関節鏡下関節内骨折観血的手術という関節面を整える術式も行います。また近年では、人工神経を用いた神経欠損に対応する神経再生誘導術もあり、これも当院で行うことができます。数多くある方法から病状に応じた方法を適応させ、より良い治療を目指しています。

腱鞘切開術

ばね指やドゥ・ケルバン腱鞘炎に行います。腱を締め付けている腱鞘を切開する手術です。

手根管開放術

正中神経の通り道である手首から手のひらにある手根管というトンネルの屋根を切開します。

関節鏡下手根管開放術

手根管開放術を、カメラを用いて小切開で行います。当院では手根管開放術は関節鏡下が基本です。

母指対立再建術

手根管症候群では、しびれに加えて母指球(いわゆる肉球の部分)という手のひらのおや指側の筋肉も麻痺します。軽度では筋力低下の自覚もありませんが、重度では小銭を出すなどのつまみ動作が困難となり、筋肉は痩せて凹みます。手根管開放術は正中神経の締め付けを解除するだけですので、神経の回復には長期間が必要ですし、改善しない場合もあります。そのため年齢や重症度によっては、つまみ動作の改善を目的に対立再建術を追加します。

骨折経皮的鋼線刺入固定術

骨折に対して皮膚を切開せずに、ワイヤーを用いて固定します。

骨折観血的手術

骨折部を展開して、できる限り元通りに整復してから、プレートやスクリューで骨折部を固定します。

神経剥離術

外傷後などに周囲組織と癒着した神経や、末梢神経が周囲組織により絞めつけられる絞扼性神経障害に対して行います。

神経移行術

神経剥離だけでなく、神経の緊張を緩和する目的で神経の走行を移動させます。主に肘部管症候群という肘での尺骨神経障害で行います。

神経縫合術

断裂した神経を主に顕微鏡を用いて縫合します。

腱縫合術

断裂した腱を縫合します。特に指を曲げる屈筋腱は、断端が中枢に引き込まれているため切開を追加することが多く、手術では初期固定の高い方法を選択します。また手術だけでなくリハビリの専門性も高く、手の専門リハビリ(ハンドセラピィ)は非常に重要です。

腱移植術・移行術

鋭利に切れた腱は縫合しますが、擦り切れた断裂では橋渡し腱移植術を行います。また腱移行術は受傷から時間が長く筋肉が柔軟性を失っている場合に、他の筋腱を用いて動きを改善させる術式です。関節リウマチ性手関節炎に伴う伸筋腱断裂にもよく行います。

靱帯修復術

断裂の多くは骨の付着部に認めます。アンカーと呼ばれる縫合糸のついたネジのようなものを骨に打ち込んで靱帯を縫合します。実質部で断裂している場合には縫合を行います。また靱帯も時間経過が長いと変性といって柔軟性が失われますので、その際には移植腱を用いて靱帯再建術を行います。

関節形成術

クッションである関節軟骨が消失した関節を別のクッションで形成します。そのため人工関節も広義の関節形成術となります。多いのは母指CM関節症で、ご自身の腱や人工靭帯を用いて関節を形成します。手首でも関節形成術は多く、非生理的な別に動く関節を形成する方法です。また肘関節では骨軟骨を移植する関節形成を行います。

人工関節置換術

第2関節の変形性関節症であるブシャール結節に行うことが多いです。また関節リウマチではMP関節(第3関節)、PIP関節(第2関節)、手関節(手首)に適応されます。

関節固定術

関節の動きを完全に止める術式であるため、変形が重度な関節症に適応します。しかし安定性は抜群ですので、母指CM関節症では力を要する作業を行う方には良い適応があります。

骨切り術

骨折後にアライメント不良など変形した骨の矯正や、関節症に対して関節適合性をよくするためなどに行います。骨折と同様で骨切り部は金属固定材料で固定します。特に尺骨突き上げ症候群に対する短縮骨切り術(骨長調整術)はよく行う術式です。

関節鏡下TFCC修復・切除術

TFCCは手首の小指側にある三角線維軟骨複合体という組織の略称です。手首を形成する複数の小さな骨を連結するために、サイズは小さく形状も複雑であるために最終診断に関節鏡は必須です。また治療も関節鏡なしでは非常に困難です。

関節鏡下関節滑膜切除術

手関節では主にガングリオンで行います。ガングリオンの原因は不明ですが、関節内病変との関連性が以前から考えられています。そのため関節鏡で関節内病変の主体である滑膜を十分に切除し、さらにガングリオンの根元を関節包を含めて切除します。再発はゼロにはできませんが、治療成績は切開した場合と遜色ありません。

観血的脱臼整復術

脱臼の多くは手術ではなく、徒手にて整復できます。しかし、靱帯や関節包を骨が貫いていると整復できないことがあり、その際には切開して整復します。また関節面の骨折を伴うものでは整復位を保持するために創外固定による牽引を追加することもあります。

関節授動術

関節の動きが悪い状態を関節拘縮と言い、これを改善させる治療が関節授動術です。関節の動きを障害する靱帯組織を観血的あるいは関節鏡下に切開します。指のPIP関節(第2関節)の関節拘縮は主に外傷後に多く、切開でなく創外固定での緩徐延長を好んでいます。

植皮術

外傷などによる皮膚欠損に行います。深部組織が露出していない創部が適応です。

皮弁作成術

皮弁は植皮術では対応できない皮膚欠損に適応されます。腱や骨が露出しているときに行いますが、この術式は栄養する血管を確認せず、皮膚の連続性がある皮弁です。隣接する皮膚で作成する局所皮弁は小さな皮膚欠損に、大きな皮膚欠損は遠隔皮弁と呼ばれる方法で対応します。遠隔皮弁では3週間ほどで皮弁切離を行います。

動脈皮弁術

適応は皮弁作成術と同じで、植皮で治療できない皮膚欠損に対して行います。動静脈だけで連続している皮弁で、皮島(ひとう)と呼ばれる皮膚の連続性のない皮弁です。比較的大きな皮膚欠損に対応でき、遠隔皮弁とは異なって1回の手術で治療しますので、治療期間が短く、安静による関節への障害が少ないです。

軟部腫瘍切除術

上肢では、軟部腫瘍は良性のことが多く、また手で悪性腫瘍を経験することは非常に少ないです。しかしながら、腫瘍は部位、大きさなどの診察所見、画像評価などを十分に吟味して、その後に手術を行う必要があります。さらに術後には病理組織検査も行って最終的な診断をします。繰り返しになりますが、良性が多いためにサイズが小さく、自覚症状が少ない場合には経過観察のみがほとんどです。しかし痛みが強い腫瘍もあり、その際には切除が有効です。

手術点数

代表的な
疾患
料金
(3割負担)
手根管症候群 手根管開放術 4110 ¥12,330
鏡視下手根管開放術 10400 ¥31,200
母指対立再建術 22740 ¥68,220
ばね指、ドゥ・ケルバン腱鞘炎 腱鞘切開術 2050 ¥6,150
手指骨折、前腕骨骨折 骨折経皮的鋼線刺入固定術(指) 2190 ¥6,570
骨折経皮的鋼線刺入固定術(前腕) 4100 ¥12,300
手指骨折、橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折 骨折観血的整復内固定術(指) 11370 ¥34,110
骨折観血的整復内固定術(前腕・手) 15980 ¥47,940
絞扼性神経障害(肘部管症候群など) 神経剥離術 10900 ¥32,700
神経前方移行術 23660 ¥70,980
神経断裂 神経縫合術(手・足) 15160 ¥45,480
神経縫合術(その他) 24510 ¥73,530
腱断裂 腱縫合術 13580 ¥40,740
腱移行術 15570 ¥46,710
腱移植術 18780 ¥56,340
靭帯断裂 靭帯縫合術 7600 ¥22,800
靭帯形成術 16350 ¥49,050
母指CM関節症 矯正骨切り術 8150 ¥24,450
関節形成術 28210 ¥84,630
関節固定術 22300 ¥66,900
変形性PIP関節症 人工関節置換術 15970 ¥47,910
TFCC損傷 関節鏡下TFCC修復・切除術 16730 ¥50,190
手関節滑膜炎、テニス肘 関節鏡下関節滑膜切除術(手・肘) 17030 ¥51,090
指関節脱臼 関節脱臼観血的整復術 15080 ¥45,240
指関節拘縮 観血的関節授動術 10150 ¥30,450
皮膚欠損 全層植皮術(25平方センチメートル未満) 10000 ¥30,000
皮弁作成術、移動術、切断術(25平方センチメートル未満) 4510 ¥13,530
動脈(皮)弁術 41120 ¥123,360
軟部腫瘍 軟部腫瘍摘出術(手・足) 3750 ¥11,250
軟部腫瘍摘出術(腕・大腿・下腿・躯幹) 7390 ¥22,170
手指伸筋腱脱臼 伸筋腱脱臼観血的整復術 13610 ¥40,830
遠位橈尺骨関節症(手首の関節症) 関節形成術 28210 ¥84,630
骨内異物除去術 3620 ¥10,860
前腕 5200 ¥15,600